物語教材の指導法3 登場人物と主役②
物語教材には主役の変化を通して主題を語る特性がある。
それが「主役」を中心に教材を読み取っていく理由である。
子供たちに「主役」(主人公・中心人物などとも呼ぶ)をどう教えるのか。
登場人物の中の誰が主役ですか
こう発問するのだが、ここでも登場人物の検討と同様に「定義」が必要になる。
「大造じいさんとがん」という物語教材がある。この物語の主役は「大造」だろうか、それともがんの頭領である「残雪」か。皆さんはどう考えるだろうか。
読者の心を大きく揺すぶる存在が主役
と定義した実践家がいる。この定義でいえば「残雪」が主役になるという主張だ。
残雪の勇気ある行動や頭領としての威厳は確かに主役にふさわしい。
一方、物語の特性から考えたら、
気持ちや行動がガラッと変化する人物が主役だ
という主張がある。
言ってしまえば、わたしはこちら派である。
主役に対して影響を与える登場人物を「対役」ということがあるが、わたしの考えでは、
主役・・・大造
対役・・・残熱
なのである。
物語の特性から考えると「主役」の定義(条件)は次の通りである。
主役の3条件
1 物語の最初から最後まで登場する。
2 途中で気持ちや行動がガラッと変化する。
3 気持ちが最もたくさん描写される。
主役が物語の途中から登場したりいなくなるということは考えにくい。物語の特性から考えたら、主役は「気持ちや行動の変化」をすべきキャラクターとして設定されるはずだ。したがって、その気持ち(心情)も他の登場人物よりも描写が多くなる。
この3つの条件に当てはまっている人物を検討させる。
この3条件で検討すれば、多くの物語 において「主役」は簡単に確定できるはずである。
それでも結構判断が難しい教材もある。
2年生の「お手紙」(アーノルド=ローベル)である。
「がまくん」と「かえるくん」・・・どちらが主役だろうか。
かなり例外的に主役が2人ということもある。
かなり前に教科書に載っていた「赤神と黒神」(松谷みよ子)である。
このような場合は時間をかけて話し合う場面を設定してもいい。
主役を誰にするのかは、この後の授業展開上、極めて重要である。
なぜなら、誰を中心として見ていくかで、物語の主題が変わるからである。
大造が主役として考えたときの主題と残雪を主役としたときの主題では大きく変わるのである。
いずれにせよ、主役が確定したら、主役を中心に物語の出来事がどのように推移しているのか調べる活動に入っていく。