物語教材の指導法5 出来事調べ②

出来事調べの授業は次のように進行する。

「1の出来事を読んだら、座ってノートに一文でまとめて持ってきます」

これをいきなり書かせると、教科書を読まずに書く子が出ることがある。

物語の授業で大切なことは教科書の言葉を根拠に思考することである。

教科書を読間ざるを得ないように指示するのだ。

読み終えた子供からノートに書いて持ってくる。

これに目を通し、赤で丸をつける。

ちなみに、この丸は「正解」を意味しない。

「最低条件書けている」と言う意味だ。

つまり、主役の名前で体言止めになっていなかったり、句点が無かったり、一文で書いてこなかったり等、よっぽどの条件外についてだけ書き直しさせる。

後は赤丸をして、

「黒板に書きなさい。」

と指示するだけだ。

なぜ黒板に書かせるのか。いくつか理由がある。

全員の考えを一覧して評価していくためだ。

まだ書けない子のヒントにするためだ。

全員が黒板に書けないといけない。

書けない子には「いいと思ったものを黒板から写してもいいから持ってきなさい」と指示する。

この辺りは教師の気迫も必要なところ。

かくして、全員の意見が黒板に書かれる。

これを端から読み上げさせる。

それを聞きながら、その子の意見の上にA、Bをつけていく。

Cは書かない。書かれないこと自体がCと言うことだ。しかし、ほとんどいない。多くは私にノートを持ってきた時点で修正されるからだ。

評価基準は前回示した通り。

A・・・出来事の大切なところでまとまっている

B・・・出来事に書いてあるがそこが最重要箇所ではない

C・・・そんなこと書いてないこの出来事調べを授業するときどのように進めるのか。

全員に評定が施される。これを「個別評定」と呼んでいる。

そして、A評定の意見の中から最も洗練されたもの、もしくは、教師の準備しておいた解を示す。

「これを全員、赤鉛筆でノートに書いておきなさい。」

こう言って視写させておく。

この作業を各出来事ごとに繰り返していくのだが、出来事が多い作品の場合は、最後のいくつかの出来事については、班で分担して要約させ、発表させて終えることもある。

トレーニングされていくとまとめるポイントが分かってきて、時間が短縮されるようになる。

こう書くと味気ない授業のようだが、実際は子供が熱中する。

ぜひ体験してみて欲しい。

個別評定ほど子供の力を引き出す教育技術はないと思っている。

誰が良くて誰が良くないのか、はっきりと判定してやることが、一人一人を大切にするという真の意味である。

もちろん、良くない子へのフォローも内包されている。

出来事調べにより、主役を中心とした物語のあらすじが明確になる。

と同時に主役の変化の概要も見て取れる。

次の時間は、主役の変化について扱う。いよいよ「主想」の部分へと入っていく。